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夢のように冷たい冬の朝、吸い込む空気は乾いているのに息を吸い込めば肺は冷水を注いだように全体がひんやり冷える。
くしゃ、と霜を踏む音が交互に聞こえる。不思議なことに、私たちは足音まで違うのだ。同じ道を歩いているはずなのに。
「お前のことを思うことは、祈ることと同じだよ」
「どういうことですか」
「いつだって幸せでいて欲しいと思うのだ」
「それは私もですよ」
「それは嬉しいな。」
足音が止まる。冬の朝は寒さの余り音まで凍りいているようで静かだ。耳が痛いのはそのせいに違いない。
両手を合わせて擦ると少しだけ温かかった。それは祈るときと同じ仕草だ。
私たちは熱を求めている。
そうして手を合わせるのだ。
「孔明、手をつなごうか。」
「いけません」
「どうして」
祈りは、ひとりきりのものなのだ。誰かを思うとき、その人はひとりきりなのだ。
私は祈る、ひとりで。なぜなら私の手はとてつもなく冷たいから。貴方の求めるものを与えて差し上げられないから。
祈りは、自分が与えられない至上の幸せが大切な人に訪れることを願うことだ。そこに自分が居ることはない。自分で出来るものなら、私は彼の手を取っている。
「孔明、理由を言わないのなら勝手につなぐぞ」
「いけません」
私の祈りなど無力なもので、殿は勝手に手を握る。ああ、なんて温かい手だろう。熱が移る瞬間は、望んでいるいないにかかわらず心地よいものなのだ。
「全く、冷たいなお前の手は」
「ご存知でしょう、私の身体が冷たいのは…それなのに殿は何故、私の手をお取りになられるのですか。」
「それは、お前の手が冷たいのが嫌だからだ。」
子供のように勝手な意見でした。
そして何がおかしいというように自信満々で笑うので、私も少しおかしくなって笑ってしまいました。
我が君、私は時々貴方についていけないと思うことがあるのですよ。
だって貴方が目指すところはあまりにも遠く、人がたどり着ける境地だと思えないのです。
貴方は私を水に、貴方を魚に喩えましたよね。
そして私の冷たい手を、貴方と同じ体温になることを望んだ。
しかし、そんなこと叶うわけありませんよ。
同じ体温の掌では何も感じません。魚が水に溶ける時と言ったら、その命を全うして朽ち果てるときだけです。そして足音すら同じになれない私たちが、同じものになることはきっと不可能なのです。
だから私は祈ります。貴方だってきっとそう、祈っているのでしょう。
二つの掌を合わせて、自分ではどうしようもないことを天に祈っている。私たちは、ひとつになりたい。
夢のように白い朝でした。私たちは手をつないで帰りました。
了
雰囲気文章です久々の普通の魚水だね!!寒さの余り頭の変なスイッチが入ったようです。お祈りをしている最中を思い出して書きました。
魚水は、理想的な関係だけどその先の叶いっこない願いを持ってしまうからちょっとさびしいかなしいそんな感じだと思います。
戦争がなくなった世界で国境が存在している、そんな感じじゃないかなと。
くしゃ、と霜を踏む音が交互に聞こえる。不思議なことに、私たちは足音まで違うのだ。同じ道を歩いているはずなのに。
「お前のことを思うことは、祈ることと同じだよ」
「どういうことですか」
「いつだって幸せでいて欲しいと思うのだ」
「それは私もですよ」
「それは嬉しいな。」
足音が止まる。冬の朝は寒さの余り音まで凍りいているようで静かだ。耳が痛いのはそのせいに違いない。
両手を合わせて擦ると少しだけ温かかった。それは祈るときと同じ仕草だ。
私たちは熱を求めている。
そうして手を合わせるのだ。
「孔明、手をつなごうか。」
「いけません」
「どうして」
祈りは、ひとりきりのものなのだ。誰かを思うとき、その人はひとりきりなのだ。
私は祈る、ひとりで。なぜなら私の手はとてつもなく冷たいから。貴方の求めるものを与えて差し上げられないから。
祈りは、自分が与えられない至上の幸せが大切な人に訪れることを願うことだ。そこに自分が居ることはない。自分で出来るものなら、私は彼の手を取っている。
「孔明、理由を言わないのなら勝手につなぐぞ」
「いけません」
私の祈りなど無力なもので、殿は勝手に手を握る。ああ、なんて温かい手だろう。熱が移る瞬間は、望んでいるいないにかかわらず心地よいものなのだ。
「全く、冷たいなお前の手は」
「ご存知でしょう、私の身体が冷たいのは…それなのに殿は何故、私の手をお取りになられるのですか。」
「それは、お前の手が冷たいのが嫌だからだ。」
子供のように勝手な意見でした。
そして何がおかしいというように自信満々で笑うので、私も少しおかしくなって笑ってしまいました。
我が君、私は時々貴方についていけないと思うことがあるのですよ。
だって貴方が目指すところはあまりにも遠く、人がたどり着ける境地だと思えないのです。
貴方は私を水に、貴方を魚に喩えましたよね。
そして私の冷たい手を、貴方と同じ体温になることを望んだ。
しかし、そんなこと叶うわけありませんよ。
同じ体温の掌では何も感じません。魚が水に溶ける時と言ったら、その命を全うして朽ち果てるときだけです。そして足音すら同じになれない私たちが、同じものになることはきっと不可能なのです。
だから私は祈ります。貴方だってきっとそう、祈っているのでしょう。
二つの掌を合わせて、自分ではどうしようもないことを天に祈っている。私たちは、ひとつになりたい。
夢のように白い朝でした。私たちは手をつないで帰りました。
了
雰囲気文章です久々の普通の魚水だね!!寒さの余り頭の変なスイッチが入ったようです。お祈りをしている最中を思い出して書きました。
魚水は、理想的な関係だけどその先の叶いっこない願いを持ってしまうからちょっとさびしいかなしいそんな感じだと思います。
戦争がなくなった世界で国境が存在している、そんな感じじゃないかなと。
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